米粉パンの比容積(膨らみの指標)と、損傷でんぷん・粒子径・吸水性との関係

膨らみの指標である比容積の意味と、粉の特性との関係を、公表資料の試験条件つきで整理します。

結論: 比容積は焼いたパンの体積を重さで割った値で、粉の特性が数字に出る

比容積は、パンの体積を重さで割った値で、単位はmL/gです。同じ重さのパンがどれだけ膨らんだかを表すので、数字が大きいほど膨らんでいます。福島県の報告では、焼いて冷ましたパン全体の体積を3Dスキャナで測り、重量で割って求めています。農研機構の資料は、米粉パンの膨らみに影響する粉の特性として、でんぷん損傷(製粉で傷ついたでんぷんの割合)、粒子径(粉の粒の大きさ)、吸水の速さと量を挙げています。

注意点があります。比容積はパンの配合、グルテンの量、焼き方で変わるので、別々の試験の数字を横に並べて、粉の優劣を決めることはできません。農林水産省の米粉の用途別基準にも、比容積の基準値はありません。

比容積に関係する粉の特性と、原文の記述

米粉パンの比容積と粉の特性
粉の特性資料の記述出典
でんぷん損傷損傷でんぷんの多い米粉は、膨らみの悪いパンになる。アミラーゼで処理して損傷を減らした粉では比容積が増えた。処理の際にアミラーゼを加えない対照は増えなかった農研機構(2014)
粒子径比容積を下げる原因は損傷でんぷんのほか粒子径で、粒子径が大きい米粉ではパンが膨らまない農研機構(2014)
吸水の速さと量吸水速度が速く吸水量の少ない米粉を使ったパンは比容積が高かった。水分量を一定にしているため、吸水量が多い米粉は水分が不足して生地が硬くなり、膨らまなかったと考えられる農研機構(2010)
粘度の安定性ブレークダウンが大きい米粉のパンは凹み(ケービング)が出た。アルファ化米粉を5%加えると抑えられた福島県

出典: 農研機構「米粉パンの膨らみの改善 アミラーゼ処理による損傷澱粉含量の低減化」(https://www.naro.go.jp/laboratory/nfri/seikatenji/files/2014_p63.pdf )、同「米粉の吸水性を評価する 米粉パンに適した米粉とは」(https://www.naro.go.jp/laboratory/nfri/seikatenji/files/2010_P21.pdf )、福島県 齋藤嵩典の報告(https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/744236.pdf )。確認日2026-10-11。

試験の条件: 比容積の数字は何のパンの値か

出典: 上記3資料。確認日2026-10-11。

損傷でんぷんの目安

福島県の報告は、一般に米粉パンには損傷でんぷん10%未満が推奨されていると書いています。この報告の試料では、損傷でんぷんはアルファ化していない米粉で6.9%、アルファ化米粉Aで3.4%、Bで11.4%でした。Bはこの目安を上回っています。損傷でんぷんの基準値と測り方はでんぷん損傷度の基準値、粒度は粒度の基準値にまとめています。

自分で使う米粉を選ぶときの見方

次にすること

粘度の数字(ブレークダウンなど)の読み方は米粉の糊化特性(RVA)の読み方、アミロース含有率の測り方は米粉のアミロース含有率のページ、製粉方法による違いは米粉の製粉方法で確認できます。作りたいものから探すときは逆引きのページが使えます。

よくある質問

比容積はいくつあれば、よく膨らんだと言えますか

このページの出典には、よく膨らんだと言える比容積の基準値は書かれていません。福島県の報告の例は1.89〜2.09 mL/gですが、これは配合も製法も違う個別の試験の値です。自分のパンと比べるときは、同じ配合・同じ焼き方で、粉だけを替えて比べてください。

アミロースが高いほど、パンはよく膨らみますか

このページの出典だけでは言えません。福島県の報告が示す試料では、アミロース含有率が高いアルファ化米粉を5%加えたパンの比容積は、未処理米粉より下がりました。ただし、この試験はアルファ化米粉の添加量を変えたもので、アミロースだけを変えた比較ではありません。アミロース含有率の基準はアミロース含有率のページで確認できます。

損傷でんぷんが多い米粉でも、パンを膨らませる方法はありますか

農研機構の試験では、アミラーゼで損傷でんぷんを減らした粉で比容積が増えました。ただし、これは粉の加工技術の試験で、家庭で同じ処理をする方法は出典に書かれていません。損傷でんぷんの少ない米粉を選ぶ方が現実的です。