結論: 3つの数字は、加熱で粉がどれだけ粘り、崩れ、冷めて固まるかを表す
米粉に水を加えて温めながらかき混ぜ、粘りの変化を記録する装置にラピッド・ビスコ・アナライザー(RVA)があります。粘度の記録からは、最高粘度、最低粘度、最終粘度、ブレークダウン、セットバックといった数字が読み取れます。ブレークダウンは最高粘度から最低粘度を引いた値で、大きいほど加熱を続けたときに粘りを保てません。セットバックは最終粘度から最低粘度を引いた値で、冷めたときにどれだけ粘りが戻る(固まる)かを表します。福島県の報告は、この2つの数字でアルファ化米粉と未処理の米粉を比べています。
注意点が1つあります。農林水産省の米粉の用途別基準には、RVAの数字を使った区分はありません。このページの数字は、研究機関が公表している個別の試験の値で、1番・2番・3番の区分の代わりにはなりません。
5つの数字の意味
| 数字 | 意味 | 出典の扱い |
|---|---|---|
| 最高粘度 | 加熱中に粘度がいちばん高くなったときの値 | 福島県の報告が、米粉の粘度特性の項目として使用 |
| 最低粘度 | 最高粘度のあと、加熱とかき混ぜを続けて粘度が下がりきったときの値 | 山口県の報告が測定項目に挙げている |
| 最終粘度 | 冷却したあとの粘度 | 山口県の報告が測定項目に挙げている |
| ブレークダウン | 最高粘度から最低粘度を引いた値。大きいほど、加熱を続けたときの粘度保持力が低い | 福島県の報告は「粘度保持力が低い」と説明 |
| セットバック | 最終粘度から最低粘度を引いた値。冷めたときの粘りの戻りを表す | 福島県の報告の表の数値で、この引き算が成り立つことを確認 |
出典: 福島県 県産品加工支援センター 齋藤嵩典「米粉のアルファ化特性を活かした米粉加工品の開発」(https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/744236.pdf )、山口県の研究報告(https://www.pref.yamaguchi.lg.jp/uploaded/attachment/61321.pdf )。確認日2026-10-11。引き算の関係は、福島県の報告の表4の数値から本サイトで確かめたものです。
福島県の測定例: コシヒカリ米粉とアルファ化米粉の数字
福島県の報告は、アルファ化していないコシヒカリの米粉と、2種類のアルファ化米粉(A・B)のRVAの数字を並べています。アルファ化米粉とは、あらかじめ加熱して、でんぷんが水を吸って粘るようにした米粉のことです。単位はRVU(RVAの粘度の単位)です。
| 試料 | 最高粘度 | 最低粘度 | 最終粘度 | ブレークダウン | セットバック |
|---|---|---|---|---|---|
| コシヒカリ(未処理) | 526 | 183 | 345 | 342 | 162 |
| アルファ化米粉A | 369 | 271 | 520 | 98 | 249 |
| アルファ化米粉B | 323 | 271 | 488 | 52 | 217 |
報告は、コシヒカリは最高粘度が高い一方でブレークダウンも大きく、加熱やかき混ぜを続けると構造が崩れやすい(粘度保持力が低い)と読んでいます。アルファ化米粉は最高粘度とブレークダウンが低く、加熱中の粘度が安定していると説明しています。セットバックはアルファ化米粉で高い傾向があり、報告はその理由として、アミロース含有率が高い影響が考えられるとしています。アミロース含有率はコシヒカリが19.7%、Aが22.2%、Bが25.1%でした。
出典: 福島県の報告(上記)の表3・表4と本文の考察。確認日2026-10-11。
粘度の数字が実際の加工の違いにつながった例
- 米粉パン: 福島県の報告では、アルファ化していない米粉のパンは上部が凹む「ケービング」が起きました。報告は、ブレークダウンが大きく加熱中の粘度が安定しないため、焼いている間に気泡の構造を保てなかったことが原因と考えています。アルファ化米粉を5%加えるとケービングが抑えられ、10%に増やすと再び起きました。パンの比容積(膨らみの指標)は、0%で2.09 mL/g、Aを5%加えて1.96 mL/g、Bを5%加えて1.89 mL/gでした。膨らみの数字はやや下がったものの、形の崩れは抑えられたことになります。比容積の読み方は米粉パンの比容積のページで整理しています。
- 米粉麺: 農研機構の成果資料は、米粉麺のゆで溶けやゆで切れは、でんぷんの特性(アミロペクチンの型、RVAのセットバック値)と高い相関があったとしています。表の例では、セットバック値は試料によって240〜2004 cPと大きく違いました。農研機構の資料の単位は福島県のRVUとは異なるため、数字を横に並べて比べてはいけません。麺については米粉麺のページを参照してください。
出典: 福島県の報告(上記)、農研機構「米粉麺に適した澱粉の特性」(https://www.naro.go.jp/nfri-neo/seikatenji/seika2021/2021-poster-37.pdf )。確認日2026-10-11。
数字を読むときの注意
- 装置と条件で数字が変わる: 山口県の報告はビスコグラフという別の装置を使い、単位もB.U.でした。装置・粉の量・加水・温度の条件が違う数字を並べて、優劣をつけることはできません。
- アミロースだけでは決まらない: 農研機構の麺の例では、アミロース含有率が24.4%の試料のセットバックは1983 cP、37.2%の試料は240 cPでした。アミロースが高いほどセットバックが高いとは限らず、福島県の報告も「報告されている」傾向として触れるにとどめています。アミロース含有率の測り方は米粉のアミロース含有率のページにあります。
- 用途の判定には使えない: パンに向く、麺に向くといった判断には、粒度・でんぷん損傷度・アミロース含有率など、複数の基準が使われます。このページの数字だけで用途を決めないでください。
次にすること
市販米粉の分析で、どの項目が測られているかは市販米粉の分析調査の測定項目、用語の意味は用語集、製粉による粒度と損傷の違いは米粉の製粉方法で確認できます。粘度の数字が載った製品資料を見つけたら、メーカーに測定装置と条件を尋ねる項目はメーカーへ問い合わせる確認項目にまとめています。
よくある質問
RVAの数字は、米粉の用途別基準(1番・2番・3番)に入っていますか
入っていません。用途別基準で定められているのは、アミロース含有率、粒度、でんぷん損傷度などで、RVAの最高粘度・ブレークダウン・セットバックの基準値は見当たりません。区分は用途別基準のページで確認してください。
ブレークダウンが小さい米粉は、パンに向いていますか
福島県の報告は、ブレークダウンが大きい米粉のパンで凹み(ケービング)が出たと説明しています。ただし、これは1品種の未処理米粉とアルファ化米粉を比べた試験での説明です。ブレークダウンの小ささだけでパンへの向き不向きを決めることはできません。
家庭でRVAの数字を調べる方法はありますか
RVAは専用の装置で測る数字で、家庭で再現できる測定法は、このページの出典には書かれていません。家庭では、メーカーが公表している区分や分析値を確認するのが現実的です。